天孫降臨の地、宮崎県高千穂町にある四季見原すこやかの森キャンプ場。
標高1,200mの九州一高い場所にあるこちらのキャンプ場に2023年10月「天空サウナ」がオープンした。
キャンプ好きの間で「予約が取れない」と言われるほど人気のキャンプ場が今サウナを導入した経緯とは。
自然豊かな眺望とともに味わうサウナの魅力について、高千穂町企画観光課 課長補佐の谷川 祐一(たにがわ ゆういち)さんに話を聞いた。
高千穂を見て、感じて、知ってもらうために
ーサウナを導入したきっかけを教えてください
高千穂町が管理、運営する四季見原すこやかの森キャンプ場は開村から30年ほどになります。
標高1,200mにあるキャンプ場は全国でも珍しく、天気の良い日はまるで降ってくるような星空と、朝には周りの山々を雲海が包み込む幻想的な風景を味わえることもあって、毎年多くのお客様がリピーターとして来てくださっています。
きれいな空気や水、ここにしかない高千穂の山々を見下ろす景色の中でサウナができたら最高だろうなと、キャンプ場内でも一番見晴らしのいい場所にサウナを設置することを決めました。
さまざまなアウトドアサウナがありますが、「ちゃんと意味のあるサウナ」を入れたいという思いがありました。
これからの観光は、地域を見て、感じて、知っていただくということが大事だと思うんです。サステナブルとか、地産地消といったストーリーや、地域の魅力が感じられる体験を提供していかないといけない。
そんな中、地元宮崎県産の杉を使ったバレルサウナを取り扱っているONE SAUNAとご縁や偶然が重なり、導入することが決まりました。
ー魅力的な施設の名前の由来について教えてください
もともと四季見原すこやかの森キャンプ場は、お客様から「天空のキャンプ場」と言われるほど、空に浮いているかのような景色の中にあります。
一番お客様に伝わりやすく、親しみやすい名前ということもあって「天空サウナ」に決めました。
今回、片側がガラス張りになった特別仕様のバレルサウナを導入したんですが、切り取られたような額縁効果で、山の景色がよりきれいに見えるんですよ。
温泉がない地域だからこそ温泉以外の魅力を全力で伝えていく
ーサウナを導入して、お客様の反応はいかがですか
先日全国のサウナを回られたという方に天空サウナを体験していただいた時に「この風景の中でサウナに入れてととのえるなんて信じられない」と言っていただきました。
山々が水墨画のようにずっと連なって、何百キロ先の山も見えるサウナは他にはなかなかないと思います。山の水を引いている水風呂もここならではの魅力です。
サウナをオープンしてまだ日が浅いので、ここから先のお客様の利用状況や反応でサウナの良さが実証できるのかなと思っています。
高千穂町内の宿泊施設を運営している若い世代の方とよく話していることなんですが、高千穂町に限らず、宮崎県は全体的に温泉が少ない地域なんです。
温泉がないなら温泉を掘ることを考えずに、温泉以外の魅力をしっかり打ち出せばここを気に入ってくれるお客様は絶対いると思うんです。
サウナで地域づくり、まちおこしをやっていきたいと思っています。
ーどんな人に来てもらいたいですか
サウナ初心者の方や、まだサウナを体験したことのない方も、キャンプをきっかけに体験してもらえたら嬉しいですね。
キャンプはもちろん、アウトドアサウナの良さは解放感だと思うんです。
自然の中でリフレッシュして、心身が健康になることでサウナを始めるきっかけにしてもらえればいいかなと思ってます。
ーサウナ業界に期待していることはありますか
僕自身、若い頃からサウナが好きで、全国のいろいろなサウナに入ってきたんですけど、昔は一部の人だけのイメージだったのが、今は敷居がなくなって若い方や女性もサウナを利用しやすくなってますよね。
体験から交流が生まれたり、サウナを通じた人の輪ができたり。そういった動きって非常にいいなあと思っています。
高千穂町から近い、宮崎県延岡市にも最近新しい貸切のサウナができたそうなので、もっと横のつながりとか、広域の連携も進めながらやっていけると面白いかなと思ってます。
地域が疲弊しないこと、それが地域を守ることにつながる
ー今後どのような取り組みをしていきたいですか
高千穂町はもともと観光の町として知られていますが、今どこの市町村も観光客の数を増やすことを重要視しています。
その反面、地方では少子高齢化が進んで、地域のプレイヤーはどんどん減少している。地域が頑張りすぎて疲弊していく現状が今後ますます出てくると思うんです。
それで高千穂町は昨年プランを改訂して、観光客数を増やすことを完全にやめたんです。
2030年までには観光客を200万人にしようって言ってたんですけど、200万人にしたら誰が幸せになるのかなって僕は思っていて。
町全体が疲弊しないためには観光客が多い時と同じ金額が稼げればいいっていう話なんですよね。つまりお客様の高単価化、高付加価値化が今後大事になってくるんです。
そのためには高千穂を通過点にせず、しっかり時間を過ごしてもらえることが大事なんです。宿泊していただくために、まだまだいろんなチャレンジをしていこうと思っています。
今、サウナを目的とした地方への旅が人気だ。このサウナ旅のブームを一過性のもので終わらせないためには、サウナ施設もその地域も独自性や魅力をもっと発信していく必要があるだろう。
天空サウナはこれから、人と地域、人と自然をずっとつないでいくだろう。