日常から離れて、自然豊かな場所でアウトドアキャンプを楽しむ人が増えている。
しかしながら、ペット、特に犬を飼っている人にとって遠方へのお出かけは少し気がかりなもの。大切な家族の一員である愛犬と一緒に、自然もサウナも楽しめる場所があったなら。
そんな方におすすめしたいとっておきの場所が茨城県高萩市にある。
2021年にオープンした予約制貸切サウナ「コアミガメ」だ。
里山にある築80年の2階建ての蔵を改装したというサウナは、長野県野尻湖の「The Sauna」の支配人、サウナビルダーとしても有名な野田クラクションべべー氏が監修したというから、サウナ好きをも唸らせる仕掛けが満載だ。
コアミガメは「宝物を全部詰め込んだ場所」と語るオーナーのキョロさんこと山形実和(やまがた みわ)さんにコアミガメの魅力について話を聞いた。
目指したのは、仲間が来た時に「いいね」と言ってもらえる場所
ーコアミガメ開業のきっかけをおしえてください。
開業のきっかけのひとつは、私が茨城県出身だということ。高校生の時に県外に出たのですが、帰省する度に「あんまりぱっとしない場所だな」と感じていました。
大学卒業後に日本各地を回って、その土地に暮らす人々とのふれあいの中で感じた温かさや、自然の美しさといったかけがえのない宝物を全部詰め込んだ場所、 仲間が来て「いいね」って言ってもらえるような、自然の中で落ち着いて過ごせる空間を作ってみたい、地元にそんな場所がなければ自分で作っちゃおうと思ったことがきっかけです。
ーコアミガメの場所に高萩市を選んだ決め手はなんだったのでしょうか?
川が好きで、アウトドアで言うと沢登りが好きなんです。
帰省した際の事故が原因で地元の病院に通院することになり、通院中に行けるきれいな川を探していた時に、高萩市にきれいな川が流れていることを知りました。
行ってみたらとても自然豊かな場所で、高萩市の「地域起こし協力隊」の制度や、空き家の活用という行政のミッションとも合致して、この高萩市で今の事業を始めることを決めました。
当初、サウナではなく宿泊施設を作ることが前提としてあったのですが、ただ宿泊施設をつくってもなかなか人は集まらないだろうと、アクセントになる何か、プラスアルファのコンテンツとしてサウナを導入しました。
もともと中学生の頃から、スーパー銭湯でサウナと水風呂を交互に入る「温冷交代浴」をごく自然にしていて、サウナは昔からなじみがあったのですが、長野県野尻湖にある宿泊施設「LAMP」でカヌースクールをやっていたことがきっかけで、LAMPの敷地内にあるアウトドアサウナ「The Sauna」に入った時に、サウナの概念が覆されました。
The Saunaは銭湯で入るサウナとは、まったくの別物で、温度が高すぎなくても体の芯まで温まる感覚や、雪が降る中で外の水風呂に入った時に体は震えているのに寒くないという体験は衝撃でした。
アウトドアサウナを作ることを決めた時に、LAMPの野田クラクションべべーさんに、サウナのプロデュースをお願いしました。
コアミガメならではの良さを、ゆっくり自分のペースで楽しんでほしい
ー施設の名前の由来についておしえてください。
コアミガメの「コアミ」の由来は、長野県小谷(おたり)村にある限界集落、大網(おあみ)に由来します。
ご縁があって学生時代にずっと大網に通っていたのですが、大網で生きている人たちがめちゃくちゃかっこよくて、さらに外からも若い人がどんどん集まってワークショップをしている姿を見て、憧れを感じていたんですね。
自分にとっては第二の故郷、心のふるさとみたいな場所でもある大網を目指して、あやかって「大網」ではなく「小網(こあみ)」にしました。
コアミガメの「カメ」は、訪れた人にゆっくり自分のペースで過ごしてほしいという想いで、ゆっくりとしたイメージのカメを施設の名前に入れました。
ーコアミガメを作るときにこだわった点や、施設の魅力についておしえてください。
サウナの設計については知り合いの設計士の方に全部お願いしていたので、サウナが出来上がった時は利用者の立場から客観的に見ることができたのですが、オープン時から変わらず思うのはロウリュが降ってくる感覚は独特だな、と思います。
サウナ室内は国産の薪ストーブを囲むように半円状の座面が2段あって、壁と天井は漆喰で作られています。
サウナを運営していく中で自分のこだわりも出てきて、そのままごろんと横になれるようにハンモックを設置したり、防水の畳を敷いたりして、「みんなの寄り場」になるような場所を増やしました。
コアミガメの場所の決め手にもなった目の前を流れる大北川は、流れが比較的穏やかで、安心して入れる深さの川なので、水風呂として利用しています。川は自分の中でこだわりが強いので、水風呂としてだけでなく、外気浴の時にせせらぎを聞いたり、存分に楽しんでもらいたいですね。
コアミガメは人工的なものではなく、あるものでどうにかしたいという想いがあるんです。
サウナストーブに使う薪だけなく、ロウリュに使う水は杉の葉を使って香りづけしたり、ルールにとらわれずに、今ここににあるものでできた方が今後の持続性にもつながると考えてます。
ストーリー性と、ありのまま、シンプルなままの美しさを大事にしています。
ーどのような人に来てもらいたいですか?
選択肢が絞られている人にこそ来てほしいですね。
子ども連れとか犬連れだからサウナに行きづらいという人にとって、貸切だと気兼ねなく利用しやすいですし、里山なので周りもあまり気にならない。
特に年配の方など「サウナが熱すぎる」という印象がある方には、コアミガメのサウナは温度が高すぎないのでゆっくり入れて、サウナの印象も変わるんじゃないかな、と思います。
ー今後サウナ業界に期待することはありますか?
自然派のサウナが今どんどん出てきているので、その土地に見合ったサウナというか、環境に配慮して、その土地に溶け込むような、良さを感じられるサウナが増えるといいですね。
ー今後の取り組みについて教えてください。
もともとオープン予定だった宿泊の準備と、倉庫の改装を進めていきます。今年の12月から工事を始めて冬の期間は休業して、来年春に新体制でスタートできるようにと思っています。
敷地全体を整備することで、サウナだけじゃなく、この土地でもっとゆっくり長く過ごせるような、つながりを深く持てる場所にしていきたいです。
コアミガメの甲羅の上では人も自然も動物も、誰もが自分らしく、あるがままの姿でくつろげる。
これからもみんなの夢を乗せてゆっくりと着実に、一歩ずつ前へ前へと歩みを進めていくだろう。
コアミガメ
住 所/〒318-0106 茨城県高萩市下君田741
営業時間/①10:00~13:00 ②14:00~17:00
改装工事のため、今年は11月末までの営業
今後の予約に関する詳細は施設HPよりご確認ください。
H P/施設詳細、予約ページは こちら
- サウナタイプ
-
貸切サウナ
サウナ温度:平均約70℃
- サウナストーブ
- メーカー/ MOKI 薪ストーブ
- ロウリュ/あり(セルフロウリュ)
- 水風呂
- 水風呂:大北川
- 水風呂温度:外気温によって3℃~18℃
- 外気浴
- ととのえチェア/あり
- サウナ2階に内気浴スペースあり