ここにしかない余白を求めて「江丹別マージナルサウナ」

ここにしかない余白を求めて「江丹別マージナルサウナ」

北海道旭川市から車でおよそ30分ほどの場所にある江丹別(えたんべつ)町。ここに今話題のサウナ施設があるという。

「江丹別マージナルサウナ」
このサウナのために北海道外から訪れる旅行者も少なくないという。
全国各地に多数のサウナがある中で、人はなぜあえて遠方のサウナへと足を運ぶのか。

地元や家業へのコンプレックスから、発想の転換で地方の特殊性を可能性ととらえ、江丹別マージナルサウナを開業した伊勢 昇平(いせ しょうへい)さんに話を聞いた。

伊勢 昇平(いせ しょうへい)さん
江丹別にある牧場「伊勢ファーム」2代目。
2011年に製造を開始した「江丹別の青いチーズ」は、航空会社のファーストクラスでも提供されるほどの最高ランクの味もさることながら、牛に負担をかけない、手間隙をかけた製造方法による希少性の高さから「幻のブルーチーズ」と呼ばれ話題となる。
ブルーチーズドリーマー、青カビ王子の肩書きで著書や講演などで活躍する傍ら、2022年に「江丹別マージナルサウナ」を開業。

オンリーワンのサウナを江丹別から世界に発信したい

ーサウナ開業の経緯について教えてください。

実家が北海道の江丹別で牧場をやっていて、10年ほど前から「江丹別の青いチーズ」というブルーチーズを生産しています。学生時代、ある人の言葉をきっかけに「実家の牛乳を使って世界一のチーズを作りたい」「江丹別を世界に発信したい」という気持ちを強く持ったことから、チーズ事業を始めました。

江丹別に様々な業種や経歴を持つ移住者も増えて、可能性が広がっていく中で、自分もチーズ以外で江丹別を発信する仕事をもっとしていきたいという思いや、数年前からサウナにはまっていたこともあって「世界一のサウナをつくろう」と2022年1月にこの江丹別マージナルサウナを開業しました。

ーどの事業にもおいても地元を世界に発信していきたいという思いが軸にあるんですね。

もともと地元に対するコンプレックスがすごく強くて、チーズ事業を始めた時は「見返してやりたい」っていう気持ちが強かった気がします。
サウナ事業は、江丹別に移住してきた人や地域の若い世代の人たちと一緒に、仕事の面白さとか、地方から世界と勝負する感覚を一緒に味わっていきたいという気持ちで始めました。

「世界一のサウナを作ろう」と始めた事業ですが、世界一の定義ってなんだろうと考えた時に、他の施設と比べて何かが優れているとかそういう話ではなくて、オンリーワンであることが僕の中で世界一の基準だったんですよね。
ここの場所の個性というものを最大限に発揮して、サウナが好きな人や、世界中のサウナに入った人にとって「あそこのサウナはかけがえがないよね」って思ってもらえればそれはもう世界一だと思っています。
お客様にとっても、ここで働いてる人にとっても、かけがえのないサウナと思ってもらえるかどうかが一番大事で、江丹別を夢をかなえる場所、自己実現の場所にしていきたいと考えています。

江丹別の自然を味わえる最高のサウナとは

ーこの場所ならではの個性を最大限に発揮した、というサウナはどんな特徴があるのでしょうか。

まず、この土地の気候の特殊性を存分に生かしたサウナという点です。
サウナを作るにあたって、「江丹別の自然をどう生かすか」ということは大きなテーマでした。
江丹別の冬は寒さが厳しく、夏は一昨年38℃まで気温が上がったほど、温度差が激しく自然環境が厳しい地域なんです。農業などの産業がその影響で発展しきれなかったところもあるんですが、だからこそ四季折々で全くちがった良さを感じることができますし、その個性を価値として生かしているのがこのサウナの魅力だと思います。

水風呂の水にはこだわりたかったので、地下水を使った水風呂を作ったことはサウナをやる上ですごく大きかった部分ですね。
肌あたりが良く、年間通して平均10度という安定した水温を保った良質な地下水を使った水風呂とあって、お客さまからもご好評いただいています。

江丹別にあるブルーシストという特徴的な地層の石を組み上げて水風呂を作ったこともここでしか味わえない魅力のひとつです。サウナストーブには江丹別産の薪を使いたかったので、充分な出力のあるエストニア産の薪ストーブを導入しています。充分にロウリュできるかという点もこのストーブを選んだポイントでした。

僕がいいなと思うサウナの要素を全部つぎ込みたかったので、設計士の方と話し合って、サウナ室にもこだわりました。
頭から足まで一定の温度でしっかり温まれるように、熱がしっかり回って蓄熱もできるサウナ室の形状と構造になっています。

機能性にこだわった結果、美しい見た目になることや、妥協せずに良い商品、良いサービスをすればしただけお客様の反応が返ってくることはチーズ事業でも感じていたことなので、その経験がサウナ事業にも生かされているかもしれないですね。

課題や余白があるからこそ感じた「可能性」

ー施設の名前の由来について教えてください。

江丹別は今では移住者も増えてきていますが、かつて限界集落と呼ばれていました。過疎化や少子高齢化によって地域の存続が危ぶまれるネガティブなイメージが強いんですけど、限界集落を英語に訳してみたら、マージナルビレッジという言葉が出てきたんです。マージナルが「余白」でビレッジが「村」。余白の村っていうとすごく可能性を感じますよね。

効率化や社会の正解みたいなものを求められる現代において、人間にとって大事なものって余白の部分、いらないと思っていた部分なんじゃないかと思うんです。
経済とか社会の中心からするとすごく小さなことかもしれないけど、ここのサウナを体験して「めっちゃいい」って言ってもらえることが、自分にとってすごく重要なことですし、そういった思いや体験をこの「江丹別マージナルサウナ」という名前に込めました。

ー江丹別マージナルサウナはどんな人にピッタリだと思いますか。

こういう人って限定するのももったいない話で。
でもいろいろな人、むしろサウナに興味ないぐらいの人に来てもらって江丹別のファンになってほしいなって思っています。

どういう人に来て欲しいかっていうより、来てくれた人に江丹別を好きになってもらえるような、江丹別の良さを感じてもらえるようなサウナにしていくことを目指しています

ー今後サウナ業界に期待することはありますか。

サウナをきっかけに、より多くの人を幸せにするっていうのはもちろんなんですけど、地域とか資源とかにもっと意識が向くようになると、エンターテイメントを提供するということ以上の効果が生まれると思っています。

もちろん、経済的に盛り上がることとか、サウナ人口が増えていくことはすごく大事なんですけど、ただ増やすんじゃなくて、自然や地域の素晴らしさとか、普段だったら見向きもされないような地域が実は可能性あるよっていう部分に、サウナに来た方の意識が向くようになるのが一番いいんじゃないかなと思いますね。

その方が多様性が生まれますし、産業としても盛り上がると思っているので、そこが両立するのが大事なんじゃないかなと思います。

ー今後の取り組みについて予定していることを教えてください。

サウナと合わせたキャンプイベントをしたり、江丹別に長く滞在してもらってここの魅力をもっと体験できるような機会を提供したいと考えています。
サウナを軸としてもっと江丹別を楽しんでもらいたいですね。

心も身体も癒される真の満足感とは

身の回りにたくさんモノが溢れていてもなぜか満たされない、そんな気持ちで過ごしている人にこそ訪れてほしいのが、地方のサウナだ。

不便さから見えてくる新しい価値観や、雄大な自然の中でのサウナ体験から得られる満足感は、心も身体も癒すにちがいない。

日常では満たしきれない「何か」を、江丹別マージナルサウナの「余白」の中に見つけに来てみてはいかがだろうか。

江丹別マージナルサウナ

住  所/071-1172 北海道旭川市江丹別町拓北217

営業時間/完全貸切制、予約に関する詳細は施設HPよりご確認ください。 

H        P/ https://marginal-sauna.jp/

サウナタイプ

貸切サウナ
サウナ温度:平均100℃以上

サウナストーブ
メーカー/ エストニア『HUUM』製 薪ストーブ
ロウリュ/あり(セルフロウリュ)
水風呂
水風呂あり
水風呂温度:年間通して平均
10℃
外気浴
ととのえチェア/あり

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