自然には、生きる強さがあふれている。大きく、たくましい自然の力を目一杯享受すると、人間は必ず前を向いていける。そんな感動体験を求めて向かう場所は、宮崎県えびの市の「白鳥温泉」だ。きっとかつてないほどワイルドで、パワフルな自然治癒が待っている。
澄んだ空気と絶景の先で
今回の旅の目的地は、宮崎県えびの市。標高830m、霧島連山の白鳥山北麓を登り、加久藤盆地と九州山地を一望できる大パノラマが視界いっぱいに広がったら到着だ。澄んだ空気と豊かな表情を楽しませる山々を背景に、「白鳥温泉」が佇む。
ここは歴史長く、地元市民からも愛される続ける温泉だ。「上湯・下湯」という二つの風呂があり、湯治場巡りをする人が最後に辿り着く場所とも言われている。だが、サウナトラベラーが真っ先に向かいたいのは、上湯にある温泉蒸気を利用した「蒸し風呂」。受付を済まし、案内板を辿って、奥の浴舎へと進んでいく。
地獄への通り道
檜造りの小屋はこじんまりとしていながら、奥の蒸し風呂場から漂う湿気を帯びた木の香りに包まれ、一瞬にしてこれから始まるひとときへの期待値が高まっていく。
ふと壁の張り紙に目をやると、「蒸し風呂のご案内」が貼ってあった。地獄という割には、「極楽〜♪」なんて書いてあって、ちょっと気持ちが和らぐ。だけど、蒸し風呂小屋の窓は蒸気で曇り、中は真っ暗で何も見えない。……いや、ここで怯んではいけない。蒸し風呂を体験せずに白鳥温泉は語れないのだ。洗い場で体の汚れを流し、バケツに水風呂から水を組み、いざ入室。ここでは、座面の冷却と衛生面もかねて、自分が座るベンチに水を撒きのが鉄則だ。
室内は天然蒸気が充満し、かなりの高温。それもそのはず、小屋のすぐ下が「地獄」なのだ。下からボコボコと音がして、地球の鼓動が体を突き上げる。末端冷え性に通年悩む私でさえ、これまでにない早さで全身に熱が入り込み、あっという間に大量の汗が吹き出す。予想以上の熱さではあるが、湿度がかなり高いので息苦しさはまったくない。
1日おきにここに通われているという地元の方は、バケツに入れた冷水をバシャバシャと頭からかぶっていた。「右手のベンチ側が熱く、左に進むに連れて温度が下がるんです。温泉の蒸気なので、曇りや雨の日はさらに温度が上がるんですよ」と教えてくれた。
ピュアな井水と融合する
水をかぶり、水風呂に肩まで体を沈める。ようやく気持ちが落ち着いてきた瞬間、その水のまろやかさに思わず驚いた。体を撫でるような柔らかさ、ピュアで透き通った水質に、山麓を流れる地下水の純度を実感した。そして、外気が多分に取り込まれる造りの洗い場のベンチに腰掛けると、視界は断然クリアになり、森に棲む虫の声や水の音が明確に聴こえてくるようになっていた。
2セット目、そして3セット目を経ると、場の雰囲気にすっかり慣れた心身は、よりここでの恩恵にあやかろうと開放的になる。木の枕にタオルを敷きベンチに寝そべると、熱の伝わりや血の巡りを体中で感じた。天井から滴る水滴にも敏感になり、室内に充満する硫黄と木の香りを鼻から吸い込むこともできた。
やがてタオルで体を拭くと、驚くほど全身がしっとり、きめ細かい肌になっていた。何より、やみつきになる気持ちよさが確実にある。谷の裂け目から沸き上がる高熱の蒸気、冷たい山水。自然の力がみなぎる白鳥温泉はまさに、地球と繋がる、いのちといのちで繋がることのできる唯一無二の場所だと感じた。
蒸し風呂の後は休憩室で体を休めるもよし、神経痛に効くという内風呂や露天風呂に浸かるもよし。蒸し卵を頬張りながら、山肌を昇る地獄の湯煙を眺めるのも楽しい。
白鳥温泉上湯
TEL/0984-33-1104
住所/宮崎県えびの市末永1470
営業/8:00〜20:00 休館:第一火曜日
料金/大人(中学生以上)1人につき 310円 小学生1人につき 220円
HP/http://shiratori-onsen.com/wp/
- サウナタイプ
- 天然蒸し風呂(単純温泉)
- 水風呂
- 温度:(夏場)約17° (冬場)約7°
- タイプ:白鳥神社の井水
- 外気浴
- 整えチェア:あり 休憩室:あり