HILO HOMMA vol.2 楽しみを営む

HILO HOMMA vol.2 楽しみを営む

「サウナには自然と繋がる幸せがある」と、vol.1で教えてくれた本間貴裕さん。自然と触れる“遊び”を続けてきた彼はいま、自然と繋がる“営み”を社会につくろうとしている。過去のバックパッカー旅のことから、これから見据える未来図まで。自然と調和しながら進化する稀代の冒険者に、さらに深くアプローチする。

本間貴裕(ほんま・たかひろ)

2010年「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」を理念に掲げ、ゲストハウス・ホステルを運営するBackpackers’ Japanを創業。同年、古民家を改装したゲストハウス「toco.」(東京・入谷)をオープン。その後、「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」(東京・蔵前)、2015年「Len」(京都・河原町)、「CITAN」 (東京・日本橋)、「K5」(東京・日本橋)をプロデュース、運営する。そして2021年春、“Live with Nature.“を提案するライフスタイルブランド「SANU」設立。第一弾として、豊かな自然の中のセカンドホーム・サブスクリプション事業の展開をスタート。

衝撃を受けたあの旅のこと

本間さんは、サウナ旅も含めて、国内外いろんな場所を訪れていますよね。これまで、どんな旅をしてきましたか?

初めて海外に出たのは19歳、大学生の頃。僕は福島の会津若松出身なんですが、それまで長期で地元を離れたことがなかったので、「せっかく出るなら出切ったほうがいい」と、バックパッカーの旅をすることにしたんです。留学も考えたんですが、英語で大学に行くだけだったら、日本の大学で英語授業を受けるのとあまり変わらないかなと。だったらもっといろんな景色や人に出会える「旅」のほうが、刺激があるような気がしたんです。

どこに行こう?と考えたとき、なんせ初めての旅行なので、「誰かに襲われても逃げられる装備でいられる場所は?」と、Tシャツだけで過ごせる南半球に絞りました(笑)。さらに僕は飽きっぽい性分なので、広大で移動できるという魅力で、オーストラリアに決めたんです。

オーストラリアではいろんな国、世代の人たちに会いました。ヒッピーの人たちとも仲良くなったんですが、彼らは僕に「お前らより俺らのほうが世界の役に立ってるんだぜ」みたいな話をするんですよ。「お前らは経済活動して自然ぶっ壊してるだろ」「俺らはキノコ採って食ってるだけ。地球にとってハッピーなんだよ」みたいな。

それから、「社会人ってめちゃくちゃ楽しいぞ」って言う大人たちにもたくさん会いました。「お前ら学生は金払って勉強してるだけだけど、俺らは好きなことやって金もらって、人から“ありがとう”って言われるんだから。早く学生なんて辞めちまえ」なんて言う人たちがいっぱいいて。学生だった僕にはすごい衝撃的で、自分の世界がグッと開いた気がします。

それからもたくさん旅をしてきました。東日本大震災のあとに訪れたキューバは、その頃日本の資本主義に終わりを感じていた僕に「幸せとは何だろう?」ということを考えさせてくれる面白い旅となったし、ミクロネシア連邦にある無人のジープ島に通ったことも、ウミガメと出会えたハワイも、すべてが楽しい思い出です。今はサーフィン、スノーボード、そしてサウナ。自然と繋がる楽しみが、僕の旅には欠かせないものとなっています。

ひとり旅とサウナは似ている

どんな時に「旅にでたい」と思いますか?

僕、圧倒的にひとり旅が多いんですが、ひとりになって淋しくなるために旅に出るという意識も強いですね。ひとりで行くと1週間は必ず淋しい、だから2週間は取るようにするんです。ある程度淋しさに慣れてくると、しだいに「自由」という方向にフォーカスできるようになる。ひとりでいるのが苦じゃなくなるし、むしろその時その時の出会いを楽しめるマインドになるんです。

それに、ひとりの環境に身を置くと「やっぱりみんな大好き!」って、改めて今ある仲間や環境へのありがたみを思い直せるんです。絶えず日常で人と接していると、どこか疲弊することもあるじゃないですか。そんな時こそ有効なんです。

それから、ひとりでいる時のほうが、美しいものを心から「美しいな」って感じられる気がします。人が何かに感動した時、それをわざわざ声に出す必要はないんだと思う。その感覚を自分の中で咀嚼することって、誰かとシェアする以上に実は幸せなんじゃないかなって思います。

なんていうか、ひとり旅は「サウナ」みたいな感じ。熱いのに耐えて外に出たときのフレッシュな感覚に似ています。1週間孤独に耐えた先で、「自分はこういう風に考えるんだ」とか「こんな感覚があったんだ」とか、自分を再発見することに繋がるんです。

野性を取り戻す旅を

本間さんは現在、“自然の中で生活を営むもう一つの家”というコンセプトで「SANU」を立ち上げられましたよね。このプロジェクトが生まれたきっかけを教えてください。

そうですね。福島にいた頃は意識もせずに自然の中で遊んでいたし、東京に出てきてからは音楽も酒も人もエンターテインメントもなんでもあるんで、めっちゃ楽しかったんですけど。10年東京で遊んだら、「もっと自然の中で遊びたい」って思ったんです。となったら僕の性格上、それを仕事にしたくなって。「じゃあ、自然の中で仕事しよう」という思考に必然的に行き着きました。

どうせ仕事をするならやっぱり誰かの役に立つ方がいい。社会のためになることをしたい。だったら自然の魅力をきちんと伝え、次の世代にまで自然を繋ぐための環境問題、社会課題まで昇華させたいと思ったんです。

まず初めに考えたのは、「自分はどうやったら自然に入れるのか」ということでした。僕自身、サウナやサーフィン、スノーボードで自然の恵みを味わっているけれど、もっとそれを日常的なものにするには?と。そうして見つかった答えは、『生活を営む感覚を自然の中で思い出す』ということだったんです。

今の時代、「何で生きてるのかが分からない」みたいな議論もよくされるじゃないですか。資本主義全盛期で価値とされていた「時計」「車」みたいな分かりやすい基準が今はなくなったので、「何のために生きるの?」という問いが個人に託されるようになったんですよね。また都市にいると、生活を営むこと自体ハードルが下がってしまって、生きる上での違う目的を探してしまい、そこでまたみんな迷ってしまうんだと思います。

でも、その議論自体が実は無駄なんじゃないかって。美味しいもの食べたり美しい景色を見て純粋に「いいな」って思ったり、時々夜が怖くなったり。そんなプロセスを重ねて生きること=「生活を営む」ということなんだから、生きる意味なんて考える必要ないんですよね。生活を営む、本当はそれだけでハッピー。自然の中では、そんな感覚を思い出せるんです。

なるほど。具体的に、SANUは人が自然と調和できるポイントをどんなところに設けていますか?

まずは、ここで過ごすことで単純に「自然っていいな」と思う時間ですね。目の前にきれいな湖畔の前で食事したり、寝たり、仕事したり、本を読んで過ごしたら、たぶん何かが変わるはず。少なくとも、シンプルに自分自身に向き合う静かな時間を得られると思います。子どもたちに自然の楽しさや美しさを伝えていくことだってできる。そんな生活体験が、使う人のメリットになると思います。

またそれにセットになって得られるのが、野性。全く敵わない山の大きさとか、風や波の強さ、夜の暗さ。自然を前にすると、その怖さというか畏怖の念に出会うんですよね。そんな時、僕らが思い出すのが野性なんです。その「自分を守らなきゃ」とか「自分をプッシュしなきゃ」という野性こそ、人の強さに繋がる気がして。それがあることで、しっかり背筋を伸ばして生きていける気がするんです。都市においては、そういう感覚に出会うことってないんですよね。ビジネスリスクとかはあっても、結局は命というものに対しては架空のリスクなので。

もう一つ。キャビンの建築資材には国産木材を100%使用して、間伐を促進していこうという方針です。間伐を行うと光が地表に届き、下層植生の発達が促進される。すると、森林の持つ水源涵養機能や生物多様性保全機能などが増進するんです。SANUとしては、この木造キャビンが全国的に広がれば広がるほど、自然環境が豊かになるという未来を目指しています。

僕らの目指すべき未来って、活動すればするほど自然が回復するというところに、どれだけのスピードで持っていけるかだと思うんです。人間だってもともと、山に入って木を伐ったり山菜を採ったり、自然の作用のサークルに入っていたはず。環境に悪いから活動を止める、のではなくて、活動することでむしろ豊かな自然を構築する手伝いをすることだってできるはずなんですよね。

SANUで過ごすことで、改めて思い出せる価値観がありそう。ホスピタリティ万全のおもてなし宿や、大型のフルサービスリゾートホテルではなさそうですね。

そうですね。これまでは、都市で生活して貯めたストレスとお金をリゾートホテルで発散する、というプロセスが行われていたと思うんですが、それってさらに自分を消費している感じがするんです。自然側から見たって、一瞬で弄ばれている感じがするし、なんかいやですよね。

それに今や、グレードの高いサービスやセキュリティはどこに行っても享受できる時代。「何して遊ぼう?」って考えた時に、≒「どこで金使おう?」っていう議論になっちゃってるんですよ。でも本当は、ご飯も山で採ってくることができるし、考えて遊ぶことも考えて生きることもできる。その力を付けるほうが、サスティナブルな楽しみ方・生き方ができるんじゃないかなと思います。

楽しみを営む、それこそが日常

本間さん自身は、今後どういった自然との繋がり方をしていきたいですか?

旅で言うと明確な目標があって。来年か再来年アラスカをスノーボードで滑りたい。そのために今練習してます。ある人に「そろそろアラスカ滑りなさい」って言われて。聞いたら、日本の雪って実は真っ白ではなく、少しだけ黄みがかってるいるんだよ、と。アラスカの雪は青に近い白なんだと聞いて、単純に「見たい!」と思っています。

同時に、やっぱり温暖化でいま氷河が本当になくなってきている。それを遠目で見るんじゃなくて、ちゃんと自分の足でアラスカの山を登って滑って、実態を目の当たりにしたいと思っています。「美しい自然」という言葉を自分自身が使うなら、自分が守ろうとしているものは何なのかを、ちゃんと目で見ておきたいなと思っています。

それから、今まで1週間のうち7分の1で自然に触れていた頻度を、これからは7分の2、7分の3にしていきたいと思っています。都会の生活ももちろん楽しいので、それを完全オフするイメージはないけれど、里山や海に頻繁に通って過ごしながら、楽しみを営むことを増やす。そんな日常生活を続けていきたいと思っています。

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