冒険に出かけるように、野性を取り戻すサウナ旅をしたい。旅の相棒となるのは、窮屈を脱ぎ、心地よさを纏えるパンツとガウン、そしてサウナハット。エシカルなものであれば、気持ちよさは倍増だ。SAUNA FASHION にラインナップする「ONE SAUNA APPAREL」は、そんな愛すべき良品たち。誕生ストーリーとそこに込められた想いを、プロダクトディレクターの種市暁さんに聞いてみた。

ONE SAUNA APPARELとは?

国産木材を使ったバレルサウナブランド「ONE SAUNA」によるアパレルブランド。自然環境・人々によるヘルシーなコミュニティ作りという意識は、アパレル製作においても息づいている。刺繍で施される「木」のロゴモチーフには、緑=木、赤=火、青=水、というサウナにおける要素が取り入れられている。

明確だったのは「サステナブルであること」

−−「ONE SAUNA APPAREL」のディレクションをされた背景には、どんな想いがありましたか?

木材のバレルサウナを提案する「ONE SAUNA」が、国内林業を推進し、循環する環境社会を目指しているというポリシーに、まず共感しました。昨今いろんな分野で、「サステナブル」や「オーガニック」に関連したプロジェクトが動いていますが、僕がずっと携わってきたファッションの世界でも、それがスタンダードになりつつあります。

「ONE SAUNA」のチームからディレクションのお話をいただいた時も、僕が『毛七』という再生羊毛を使用したテキスタイルブランドとアパレル製作のプロジェクトを進めている時で、そこにおける考えと「ONE SAUNA」が作ろうとしているアパレルの考えがすごくリンクしたんです。

じゃあ、どういうものを作っていこうか?と考えたとき、「サステナブルでありたい」という軸が明確だったので、プロダクトの内容を決める上で迷いはなかったですね。「可能な限り自然なもの、地球に優しいもの、体に優しいもの」を作りたいと思いました。

−−現在のサウナシーンにおいて、どんなアイテムが必要だと思いましたか?

最初に作りはじめたのがサウナハットです。高温のサウナの中では、髪の水分を熱や乾燥から守る必要がある。それに頭部を守ってのぼせ防止をしたほうが、長い時間を楽しめますよね。だから、断熱性と保温効果が高い素材のサウナハットを目指しました。さらに、僕らは「サステナブル」であることが課題なので、冒頭でもお話したリサイクルウールのブランドである「毛七」に依頼することにしました。

「毛七」の紡績技術はものすごく優れていて、古着や裁断クズの中から糸一本にしても組成を分けているんです。再生羊毛の少し硬めな特徴を活かして、形が崩れにくいタフなものに仕上がったのはもちろん、快適なかぶり心地も叶えるハットが完成しました。さらにこのサウナハットは、男性がかぶるとちょっとおしゃれに見えるし、女性がかぶっても本当に可愛いんですよ。

−−「毛七」さんがされている手仕事、熟練の賜物ですよね。彼らとタッグを組んでいる理由には、そんな作り手の人たちへのリスペクトもあるんでしょうかね。

職人の皆さんはシャイなんだけどすごく熱いし、情熱を持って作っているんですよね。だから僕みたいな立場の人間や、僕らが届けるアイテムに課された役目は、そんな方々の活動がいかに素晴らしいかを正確に届けることだと思っています。職人さんは0から1を作ってらして、僕にはそれはできない。リスペクトというか感謝の気持ちが当たり前にあります。

目指したのは、サステナブルであり色気のあるもの

−−今回作られたウエアには、どんなこだわりがありますか?

オーガニックコットンのボディを使ったTシャツと、カシミヤのガウンを作りました。サウナの後って肌感覚がとても敏感になるから、体に直接触れるアイテムに関しては、本当に気持ちのいいもの、やさしいものを着たくなるんですよね。体が自然とそれを求めている感じ。だからガウンは、肌馴染みの良いカシミヤ素材に拘りました。

ただナチュラルでありたいというポリシーは生かしたいので、あえて無染色のカシミヤを選んでいます。余計な色がついていないので、糸そのものの質を肌で感じられて本当に気持ちいい。着ていることを忘れる羽衣のような軽さも魅力だし、永く着てもらえると思います。

−−このガウンは見た目にもおしゃれですよね。ファッション要素も多分にあると感じました。

そうですね。この裏テーマには、少しラグジュアリーというか“色気”みたいなのもあっていいかなと思って。とろみのある素材感と、所作によってしなやかに揺れるデザインが、色気をさりげなく醸してくれるんです。サウナだけじゃなく、家の中でのリラックス着にもなるし、海やプールなど、いろんなシーンで着てもらえたら嬉しいですね。

思うんですが、サステナブルだからって“マジメ”なデザインだけじゃつまらない。それに、地球環境まで考えられたものこそ、これからのラグジュアリーと言えるんじゃないかな。そんなメッセージも、着る人に伝わってくれたら嬉しいです。

地球にやさしいことは、必ず自分に還ってくる

−−お話を伺っていると、再利用に貢献できたり、永く使ったり、「ものを大事にしていこうよ」というメッセージが伝わってきます。

少し前までは、消費消費の世の中でしたが、もの自体に愛着を持って、それを使っている自分が好きでいられるようなアイテムが、これからもっと重宝されていくと思うんです。そういう意味では、サステナブルな考え方ってサウナとものすごく相性がいい。自然の力からエネルギーをもらうので、そこに対するありがたみを持てるじゃないですか。

−−種市さんはサーフィンも趣味とされてますが、海などの自然に近いからこそ、環境への意識も湧いてきたんでしょうか?

やっぱりゴミが本当に多いですよね。昔に比べれば、街は少しずつきれいになって来ていると思うんだけど、反面、海や山がきれいになってきたかというと…、ちょっとね。自分が意識して見ているからかもしれないんですが、サーフィンに行っても海や砂浜で、昔よりゴミが目に付くんですよね。

僕自身も大それたことはできないけど、なるべく自然や環境に負荷がかからないようなことをしていきたいなと思っています。できる限り移動に自転車を使ったり、できるだけものを大事に永く使ったり。東京にいたってできることってあるんですよね。選択や行動を変えれば、明日のカッコイイを作っていけると思います。

サウナもそうだけど、過剰に無理して遊ぶより、自然の中で遊ぶ気持ちよさの方が、年々価値を感じるようになっているような気がします。当たり前にあるものを見直せる楽しみが、そこにあるのかもしれません。結局、地球にやさしいことをやっていれば、それが自分たちの体に還ってくる。これからもそんな考え方で、ファッションにおけるものづくりでも、無駄に消費されないもの、ゆっくり使ってもらえるものを作っていきたいと思います。

種市暁(たねいち あきら)

1972年生まれ、東京下町出身。長年勤めたビームスを退社し、現在はフリーランスとして数々のブランドのコンサルティングやプロダクトのディレクションなどを手掛ける。サーフィンを愛する海男だが、最近は仲間たちとのサウナやキャンプも新たな趣味に加わった。
Instagram: @taneichiakira

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