「人」と「木」と書いて、「休」という字になる。古くから、なぜか人は木に安らぎを感じる生きもののようだ。サウナも同様で、壁面に木が使われていると視覚で温もりを感じ、嗅覚で癒やしを得る効果がある。木は昨今のサウナ人気の一端を担っているのかもしれない。

そんな木々に親しみを覚えるサウナーたちに、ぜひ手に取ってほしいスキン&マインドブランドがある。その名は「BAUM」(バウム)。天然木をパッケージに活用した愛らしいフォルムは、一度見たら忘れられない。ミニマルでアーティなデザインからは哲学的なメッセージもひしひしと感じる。この「BAUM」が見つめる未来、そしてもたらすべく実りとは? 「BAUM」グローバルブランドマネージャーの西脇さんにお話を伺ってみた。

スキン&マインドにアプローチ

―「BAUM」のコンセプトを教えてください。

西脇さん:「BAUM」は、「樹木との共生」を通じて、新たな豊かさの在り方を提供するブランドです。受け取った樹木の恵みに感謝し、その資源を将来へつなげていく…「樹木」をモチーフに、自身の消費行動が循環へつながっていく喜びや、自然と共生することの素晴らしさを知ってもらえたらと思っています。

樹木に着目した理由はいくつかあります。1つは樹木が持つ類稀なる「生命力」です。樹齢何百年、長いものでは何千年、樹木は大変長寿であり、その生命力を紐解くと、貯水、成長、環境防御などのはたらきがあり、これらをビューティに応用できるのではと考えました。大樹が大地に張った根からたっぷりの水を吸い上げるように、みずからうるおいをたっぷりと抱え込んだみずみずしい肌を育てるスキンケアを提供したいと考えました。

二つ目は、樹木が人間の心身にもたらす癒しの効果です。森林浴や木のサウナに入った時に実感されたことがあるかもしれませんが、すがすがしい気持ちになって心が洗われることがありますよね。その正体は、木が外敵に傷付けられた時に出す「フィトンチッド」という揮発性の物質なのですが、これが人間の免疫機能を向上させたり、ストレスをコントロールしてくれるといわれています。海外では森林医療という分野もあって、樹木が人体にもたらす効用についてはメカニズムが科学的に解明されつつあります。

そういった点からスキンケアだけでなく、オーデコロンやルームスプレーという香りを楽しむアイテムも用意しました。日常的に膨大な情報量に晒され精神的負荷の高い現代人にとって、アウターからのスキンケアだけでなく、マインドからもアプローチすることが求められていると考えたのです。

アウトドアサウナにも通じるところがあるかもしれませんが、健康や身体のメンテナンス効果に加えて、自然界の恵みには、心を開放したり生きる実感を湧きあがらせるパワーがありますね。BAUMも身体と心を解放するマインドフルな要素も兼ね備えています。

そして、樹木に着目した3つ目の理由ですが、樹木は伐採しても植えたらちゃんと生えてくる、まさに循環する資源の象徴であるという点です。誰にとっても身近な素材でありながら、命のめぐりを感じとり、使うことでその循環の一助になれるものなんですよね。樹木を要素とする「BAUM」は、自然の恵みを一方的に受け取るだけではなく、受け取った分の感謝を次の未来へと返していく、より良い「循環」を目指すブランドなのです。

いい毎日に調和する、いいもの

―パッケージはナチュラルでありながら、都会的なデザインが印象的ですね。ここにはどんなこだわりがありますか?

西脇さん:そうですね、まず素材としては本物の木であることにこだわりました。ただしそれは新たに木を伐採するのではなく、サスティナブルな調達方法を通じて、賢く活用したいと考えました。そこで我々は家具メーカーの「カリモク」さんとのコラボレーションで、家具の製造工程で発生する小さい木材を再生利用しました。家具の製造現場で使う努力をしても、どうしても家具に活用しきれない端材に、新たな命を吹き込むことができればと考えました。

またデザインは、木の温もりはありつつも、日常生活の中、特に都会の生活空間においても違和感がなく、そして飽きのこない洗練された佇まいを目指しました。「かっこいい」とか「家に置きたいな」って思ってもらえることを何より大切に、そして手に取ってもらった時に「サスティナブルなものでできているんだ」とか「木肌に触れると心が落ち着くんだ」と気づいてもらえたら嬉しいです。それから、世代やジェンダーを越えて幅広いお客様に愛用していただけるよう、ジェンダーニュートラルでシンプルなルックスを追求しました。

―資生堂はデパートで取り扱うラグジュアリーなものから、ドラッグストアで扱われるリーズナブルなコスメまで揃えていますよね。その中で、「BAUM」はどのようなポジションに位置していますか?

西脇さん:資生堂は近年、 “プレステージ・ファースト”という戦略を掲げていますが、「プレステージ」とは何でしょうか。これまでは高価格やラグジュアリーなものなどが贅沢として捉えられていましたが、「何をもって豊かとするのか、贅沢とするのか?」と、その考え方は変容しています。サウナやキャンプなど自然に触れあう人達も増えている今、物質的な消費型から精神的な豊かさへと価値観のシフトが起きていることを感じ取っているんですね。

また、消費活動の捉え方も急速に変化しつつあるように思います。自然資源を枯渇させてはいけないという緊急性や必然性の文脈だけではなく、自分ごととして気持ちの良い消費活動に価値を感じているのではないでしょうか。

そんな背景もあって、私たちは昨今「スキン&マインドブランド」というテーマで自らのドメインを定義しているんです。単純に肌に塗るだけの効果だけではなく、自然界の恵みを受けること、自然と共生することで精神的にも充足を得られるアイテム。そしてその自分の選択や消費行動そのものが、どこかで社会につながっていくこと。これこそがこれからの贅沢なんじゃないかと感じています。

人と繋がり想いをつなげる

―サウナもそうなんですが、マインドまで満たされると誰かに教えたくなったり、共有したくなったりしますよね。「BAUM」にもそんな効果がありそうですね。

西脇さん:そうですね、サウナシーンではコミュニティが大事にされている印象です。その点では「BAUM」も似ていて、通常であれば化粧品を作る際、ビジネスの発注側と受注側という取引関係の中でものづくりが進んでいくのですが、「BAUM」はまんなかに思想があり、そこに共感してくれた人と一緒にブランドを協創していく。そしてそれが次第に伝播し輪が広がっていき成り立っています。山や森をもっと深く知り、守り、育てるという思想が、人々を繋げているんだと思います。

また実際に購入して使ってくださった方が、「BAUM」の、そして「BAUM」の思想のどこかに共感して、誰かへの語り手になってくださっていたりもします。自然や人と共生する繋がり自体を、「豊か」と呼ぶ人が増えたのかもしれませんよね。

このようなコミュニティ型のマーケティングスタイルは、化粧品業界としてはわりと珍しいと思います。1個の正解みたいなものを作らずに、人によって共鳴するポイントが少しずつ違ったりするのもまた珍しい。でも、それこそが「BAUM」の特徴で、多様化する時代にしなやかに調和するブランドとして成熟していけたらと願っています。

BAUM

オフィシャルホームページ
https://www.baumjapan.com/baum/index.html

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