国内外のアウトドア用品やアパレル、アクセサリーなどが一堂に集まる巨大展示会「JUMBLE TOKYO(ジャンブル トーキョー)」。長年ファッションを主軸に展開し、トレンドのアンテナ基地として注目を集めてきたが、今年9月に開かれたその空間には、明らかに変化があった。キーワードは「ウェルネス」。健康意識が市場やライフスタイルに、本格的に浸透している潮流を感じたのだ。今回はJUMBLE TOKYOをオーガナイズするお二人と、サウナを含めたウェルネス産業のゆくえについてお話してみよう。
JUMBLE TOKYO
2004年秋、アパレルブランドを中心にした合同展示会としてスタートし、毎回テーマに沿って出展ブランドをセレクト。”ごちゃまぜ”の語源の通り、様々な世界観を提供し続け、東京とパリで開催している。
https://jumble-tokyo.com
北田真二
NF Consulting inc.代表取締役
JUMBLE TOKYO事務局代表
佐藤 香菜
ブランディング・ディレクター
JUMBLE TOKYO ウェルネスマーケット統括
盛り上がるウェルネスマーケット
― 今年9月に開催されたJUMBLE TOKYOは、ウェルネス商品の展示エリアがとても広くて驚きました。そこにはどんな思惑があったのでしょうか?
北田:以前はアパレルを中心に、ファッション業界が9割という構成でした。だけど時代は変わって、僕が佐藤さんにちょうどお会いしたタイミングくらいから、ベタな考えですけど、モノからコトへ移行していかないと業界全体を盛り上げられないと感じていたんです。これまでのファッション業界は、必ず新作を発表して、オーダーをつけてもらって、担当者に納品して、というサイクルを続けてきましたが、過剰な消費スタイルは今の時代にマッチしていないんですよね。
そこで、もっと永続的でコンセプチュアルなテーマとして、アウトドア、そしてウェルネスという方面を少しずつ拡大してきました。その転換のおかげで、いろんなジャンルの人が参加してくれるようになったし、来場者も毎年多岐にわたるようになって。新しいビジネスが生まれている気がします。
佐藤:私はJUMBLE TOKYOのウェルネスマーケットを担当していますが、ウェルネス・ファッション・アウトドアというブツギリではなく、いろんな分野のブランドさんが「ウェルネス」という広い定義に共感して参加されているのを感じています。今後ファッションにおいても、きちんとしたものづくりをしているところ、完全なる受注生産をしているところ、社会貢献に挑んでいるところなど、時代を捉えた面白いブランドが集まってくることに期待しています。
北田:そうですね。展示会というより、いろんなカルチャーを発信するイベント、ジャンルの垣根を超えてみんなが楽しめるイベントになってきているように思います。
なにはなくとも「温活」
― 会場にはバレルサウナも展示されていましたが、かなり注目を集めていました。どうしてサウナを入れようと思ったんですか?
北田:国産木材を使用したバレルサウナブランドの「ONE SAUNA」を置いてもらったんですが、たくさんの人が足を止めて、中を覗き込んでいましたよね。実際に見た人たちからは「木の香りがいい」とか「隠れ家みたいで楽しい」とか、とてもいい反応があったように感じます。サウナを入れようというアイデアは、はじめに佐藤さんが提案してくれたんです。
佐藤:今回、ウェルネスの展示エリアでは、「温活」をテーマにしたいなと思ったんです。コロナ禍もあって、今は冷えを解消したり、免疫力を上げていかないといけないご時世。そう思ったとき「あ、サウナ置きたい!」と思いつきました。温まることって、普段の生活ではお風呂に浸かるくらいだし、お風呂に浸からずシャワーだけで済ませる人だっている。だけど、体温が1、2度上がるだけで免疫力ってすごく上がると言われているんです。だったら温かさが持続するサウナを、健康や美容という側面でフィーチャーしたいと考えたんです。
実はコロナ禍で、入浴剤の売上ってすごく上がったんですよ。家にいる時間が増えたことで、お風呂に浸かる人が増え、その時間に投資する人が増えた。すると、温まることで体や肌のコンディションが改善された!と実感する人が増えて、結果、今までやりたかったけど忙しいのを理由に手を付けていなかった人たちが、「温活」に興味を持ち始めたんです。きっとその人たちは「サウナ」にも必ず興味を持つんじゃないかな。
北田:僕も基礎体温がめちゃくちゃ低くて、いつも健康診断のときお医者さんから、「とにかくお風呂に入ってください」って言われます。
佐藤:そうなんですよね。肌荒れや便秘に悩む女性も多いけど、みんな本当に温めなさすぎなんです。ホルモンバランスだったり、メンタルの不安だったり、ほとんどのことは温めれば解決するんじゃないかってくらい大事。そもそも温まることって、母親のお腹の中にいるのと同じようなものじゃないですか。安心感が違うし、ストレス緩和になる。だから私は、「サウナは子宮!」と言っています(笑)。
― ちなみにお二人はサウナはお好きなんですか?
佐藤:私は子どもの頃、家族と一緒にスーパー銭湯に行って、扉を開けた瞬間ムッとした熱を受け、「うっ苦しい…」と感じてしまって。そこからは全く入りませんでした。むさ苦しいところ、狭いところ。サウナってそういうイメージだったんです。でもこの近年サウナに行ったら、もう全然違うものができているんだ、と感じたんです。できた、というか、フィンランド式など熱いだけじゃない「本来のサウナ」が、日本にも浸透し始めたんだな、と実感しました。
北田:僕もまさにそれですね。サウナが昔のイメージのままだったら、今こんなにも女性に受け入れられることはなかったかもしれませんね。
― 今後、女性に向けてサウナを推進する上で、必要なことってなんだと思いますか?
佐藤:以前リトアニアで入ったサウナは、室内が琥珀でできていたんです。琥珀は古くからさまざまな疾患治療に用いられてきた宝石で、体や素肌の回復力をサポートするという医学的効能が認知されているんです。こうして「温めること+α」があるのは、女性には嬉しいですよね。しかも温まった後は、琥珀の粉末を使ったマッサージで、体をさらに揉みほぐしてくれるんです。水風呂ではなくマッサージがセットになっているのも、女性は喜ぶなと思いました。その体験をすることで、自宅でお風呂の後にマッサージをするという「セルフケア」にも繋がっていきそうですしね。
女性はとかく「付加デザイン」を必要としているんですよね。そういう意味では、入浴剤やマッサージグッズなど、“自宅にいながら、サウナと同じ効果をできるだけもたらせてくれるプロダクト”にも、今後需要が高まってくると思います。
― なるほど。男性においては、どのようなサウナ文化が好まれると思いますか?
北田:今回展示した「ONE SAUNA」のバレルサウナは、みんな大好きですよね。レディースとは違う目線で。まずパッケージがかっこいいです。「ONE SAUNA」代表の揚松さんがデザインされていると聞きましたが、彼が元航空整備士だって聞いて納得しました。どこか機体っぽくて、ロマンがあるんですよね。
また、アウトドアサウナというのも大きな魅力だと思います。どこか旅を感じさせるし、いろんな拠点に置けるわけだから「こんな業種と一緒にコラボしたら…」なんて、ビジネス観点でも妄想できて面白い。アウトドアメーカーや、キャンプ場オーナー、イベントオーガナイザー周りでは、需要がどんどん高まりそうですよね。
佐藤:私は「ONE SAUNA」のバレルサウナを見て、『ジプシーキャラバン』を思い出しました。それこそ自由にペイントしてカスタマイズしても可愛いなって。この可愛い樽型には夢があるし、男女ともにきっと好きな人は多そうですよね。