新しい刺激に出会える場所、訪れた人を魅了し進化し続ける「サウナ発達」

新しい刺激に出会える場所、訪れた人を魅了し進化し続ける「サウナ発達」

固定概念にとらわれない独創的な空間でサウナを楽しめる施設が福島県南相馬市にある。

その施設の名は「サウナ発達」。

土や流木など、地元にある資材を使って作り上げたというこちらの施設は、サウナへの情熱と地元愛が随所に感じられる、他の施設とは一線を画す存在だ。

この土地、この時代だからこそできたというサウナ発達の魅力とは。
サウナと同敷地内に飲食店「川口商店」と宿泊施設「巣」も経営する芸人、川口雄大さんに話を聞いた。

川口 雄大(かわぐち たけひろ)さん
芸人、サウナ発達オーナー、川口商店 第4代店主
福島県南相馬市出身。高校卒業後上京し、芸人などさまざまな経験を積む。東日本大震災後、地元の南相馬市へ戻り、家業である「川口商店」を継ぎ、サウナや飲食店を通して地域を盛り上げている。

お風呂の起源までさかのぼり追求した、ととのいのその先 

ーまずサウナ発達の特徴について教えてください。

特徴は土でできたサウナということ。
混合土を袋に入れて積み上げる「アースバッグ」という建築工法でサウナを作りました。

なぜ土なのかというと、日本のお風呂や沐浴の起源をさかのぼると奈良時代につきあたったんです。当時の人たちは、洞窟の中で焚き火をして汗をかいていたことを知って自分たちの技術と現代の文明とかけ合わせて、日本古来のお風呂体験ができる「洞窟サウナ」を作ろうと思ったんです。

土のサウナと他のサウナの違いはなんといっても「湿度」。
一般的な木造のサウナは温度が80度から120度くらいで、湿度がだいたい10%から15%ぐらいといわれている中で、うちのサウナの湿度は60%以上は保てるようになっています。

ここのサウナ室内の温度は夏場は90度くらいですが、土でできているので外の天気とか外的要因に影響を受けやすいんですよね。
水風呂も地下水を使っていて温度は12度くらいで安定していますが、
その日に合わせたベストなコンディションをいつも調整しながら、お客様にご提案しています。

震災とコロナを経てあらためて感じた人と街への想い

ー施設名でもある「発達」にはどんな意味が込められているのでしょうか。

この「発達」には3つの意味があります。

まず1つ目が「感覚」の意味での発達
うちのサウナは壁も座るところも土でできていて、そこにガンガン熱がたまっていくんです。横になって入ってもらった時により感じられるこの「蓄熱」と、「高温多湿」の効果でととのいのその先にある感覚を体験できます。

2つ目は「地域と共に発達していきたい」という想いです。

ここ南相馬市原町区は、東日本大震災の時に福島第一原発が爆発したところから半径30キロ圏内ほど、避難指示によって一時的に人口がゼロになった街です。ゼロからまた街を作れる場所っていうのも世界中探してもなかなかないですよね。

自分も震災後東京から南相馬に戻って家業の川口商店を継いで、飲食店として事業を再スタート、起業家の方や他のUターンの方たちと一緒に「これから地域を盛り上げていこう」って時にコロナがあって。

コロナによって飲食の売り上げが9割ぐらい落ちちゃったんです。街全体も震災後の時よりも活気がなくなってしまいました。
そんな街を目の当たりにした時に思ったのが、「自分だけ助かったってしょうがねーな」っていう気持ち。
自分がいくら楽しくて幸せだなと思ってても、隣で大切な人とか家族とかが悲しい思いをしていたり、涙を流してたら幸せだと思えないなって。

じゃあもっと大きな範囲で、この街に対して自分が何できるかなって考えたんです。それで出したのがシンプルな答えだったんですけど、飲食とサウナだったんですよね。
お風呂上がりとかサウナ上がり、飲み物とか食べ物めちゃくちゃうまいじゃないですか。

一番ご飯を美味しく感じられる状態で、当たり前のように地元の食材使ったもの、地元の商品とかサービスを一番いい状態で堪能してもらう。 自分のできる範囲で、どれだけ地域を巻き込んでいけるかをサウナ発達を通して挑戦していく、地域とともに発達していくっていう意味を込めています。

3つ目の由来は、普段ここに来てくれた方に直接でしかお伝えしていないんですけど、

自分は子どもの頃から周りに心と体がバラバラで生まれてきた性同一性障害の方とか、自閉症だったり、発達障害を抱えた方が常に身近に居るような環境で育ってきたんです。
障害って聞くとびっくりされたり、身構えちゃう方もいらっしゃるんですけど、楽に聞いてもらえればと思ってるんです。

成長して小学校低学年以上になってくると、障害のある方は周りとちがうって言われ始めるんですよね。言われた本人は自分の可能性に蓋をして目立たないようにして、やりたいことを諦めてしまう。そんな姿を見て、もったいないっていう気持ちとめちゃくちゃ悔しいなって気持ちがあって。

人間だれでも得意なことと不得意なこと、両方あるのって当たり前なことだと思ってるんです。苦手なところはちょっとへこんでて、その分得意なところがピョンって突き出して発達してるイメージなんですけど。
その人だからこそできる表現があるって信じてるんですよ。そのめちゃくちゃ尖ったところで勝負できる場所がこの街になかったんです

だからこそサウナ「発達」だったり、宿泊施設の「巣」っていうのをやっていて、自分の好きなこととか、やりたかったけどやれなかったこと、諦めてたことを100%注ぎきれるような箱をつくりたい、それがサウナ「発達」の名前の由来でもあります。

だからこそここは一生完成しないんです。お客様も表現する人もこれからどんどん一緒に発達していけるような場所が世の中に一つでも増えたらいいなあっていう想いでやっています。


ーサウナ発達はどんな人におすすめですか

迷ってる人とか、自分がそのやりたかったことがあるけど挑戦できない人とか、一歩踏み出せないって人はうちに来たらバリバリ刺激受けると思います。
うちのサウナ入ったら人生が発達していくんじゃないかな。挑戦する人が大好きなので一緒に発達しませんかっていう気持ちです。

うちのサウナ室は照明と音楽が全部自分でセッティングできるんです。
貸切なので自分の好きなように楽しんでもらいたいですね。


ー今後サウナ業界に期待することはありますか。

サウナとの掛け算で地方はもうちょっと頑張れるんじゃないかなって思ってるんです。
これだけ自然豊かな国って、世界中探してもなかなかない。日本って水もきれいだし、森林もあって何よりも清潔、あといい人がいっぱいいるなって思うんです。

うちのサウナも石とか木とか地下水とか全部地元のもの使ってて、裸で福島を体験できるようになってるんです。その土地の資源や自然、食を堪能できるのがサウナの魅力だと思います。

これまで知られてこなかった地方の魅力がサウナによって発掘されていくような、サウナを目的とした旅をひとつの手段として発展していくっていうのはありなのかなって感じています。

そういったことを先行事例として、トップ切ってやっていきたいなあって常に考えています。

ー今後の取り組みについて予定していることを教えてください。

今後、露天風呂をつくっていくんですけど、浴槽の中にスピーカーが入ってて音に潜れるお風呂なんです。好きな音楽や朗読を聞きながら星空を見て露天風呂に入れたら最高ですよね。あとは、アースバッグ工法を用いた家の作り方を教える学校を計画をしています。

震災を経験した場所だからこそ、失ったものもあれば得るものもあるっていうことを伝えたいし、自然を通じて感じてもらえればと思います。

自分自身、震災が起こった後地元に帰ってきた時に、役に立つことが全然できなかったんです。その経験から「体ひとつで誰かの助けになれることをできるように、1年で1個自分ができることを増やそう」って決めました。
飲食始めたり、
災害ゴミを使って宿を作って運営を始めたりしたんですけど、後震災が起きても体ひとつでどこにでもいけるような、そんなことを楽しみながらやっていけたらいいですね。 


自分の芸事で誰かを喜ばせたい

インタビューの中で川口さんは「サウナを通して人とのつながりが生まれることにやりがいを感じている」のだと語る。
舞台やテレビの中だけでなくても、自分の芸事で誰かを喜ばせたいという彼の言葉からも「人が好き」という気持ちが伝わってくる。

個性を否定せず尊重し、挑戦し続ける川口さんだからこそこのサウナができたのだと納得した。

奈良時代の先人たちに想いを馳せながら、サウナ発達で人間の本質に立ち返ってはいかがだろうか。

サウナ 発達 

住  所/975-0008 福島県南相馬市原町区本町3丁目21

営業時間/(宿泊利用者)チェックイン15:00〜、チェックアウト11:00
     サウナ利用可能時間 15:0021:00、翌6:00〜10:00
                  予約等詳細は以下HPをご確認ください。   

H        P/ https://hattatsu.jp/

サウナタイプ

屋内タイプ、貸切サウナ

サウナストーブ
メーカー/ 泉興産 MISA 電気ストーブ
ロウリュ/あり(セルフロウリュ)
水風呂
水風呂あり(地下水)
外気浴
整えチェア/あり

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