一生に一度は行っておきたいサウナがある。そこには朝の匂いがあって、風や波の音がある。旅の前より少し変わっている自分に出会える、スローな時間を求めて、北の果てへ。

太平洋を臨む静寂の別天地へ

日常を抜け出し、人生のアクセルをゆるめる旅へ出たい。
そんな思いが頭をかすめたら、できるだけ自然に身をゆだねて、「サウナ以外何もしない」を楽しめる場所へ向かおう。
目指すのは、北海道・帯広。十勝帯広空港から、北の大地特有の美景を車窓から眺めながら海岸方面に車を走らせる。やがて視界に入ってくるのは、ビーチサイドにぽつんと佇む一軒のコンテナハウスとサウナトレーラーだ。


ここ「晩成グランドスイート」は、11組限定のサウナ付きゲストハウス。コンテナハウスの外観はコンパクトでありながら、室内にはダイニング、リビング(ソファベッド付き)、キッチン、シャワールーム、トイレ、そしてロフトにも2台のベッドと、意外や大充実の設えだ。窓からは壮大な太平洋を臨み、波音以外は何もない静寂な時間が流れている。旅慣れた人でさえも、ここが別天地であると感じずにはいられない。



都会が持っていないものに価値を感じる

さっそく、お待ちかねのサウナトレーラーを覗く。可愛い小屋のようなサイズでありながら、中は大人ふたりが余裕で座って入れる快適さだ。薪ストーブに火を入れるとほどなく煙突から煙が立ち上り、室温はたちまち90110°に。「早く入りたい!」。サウナをこよなく愛する旅人の胸は、自然と高鳴ってくる。



扉を開け、熱せられた空間の中でゆっくりとロウリュする。木壁の心地よい香りを纏った熱気に包まれて、足先から頭のてっぺんまで忘れていた「感覚」が呼び戻されていくようだ。ふと小窓の先に視線を向けると、穏やかな水平線が飛び込んでくる。素裸で海岸にいるという開放感がたまらない。



やがて熱さの限界を感じたら、目の前にある野外水風呂へと飛び込む。冬場ともなれば水温はシングルとなり、温冷差の大きさに驚かずにはいられない。だが、水のベールが肌をやさしく包みこんだあと、軽く水分を拭き、ウッドデッキのリクライニングチェアに体を預ける頃には、ここまで来た意味を知ることとなる。



朝の外気浴では、清々しい海の匂いが鼻をかすめ、波間がキラキラと輝く。夜の外気浴では、見上げた視線の先に星屑が散らばり、海原には月の道が描かれる。自分を包むものが、光と風と澄み切った空気を含んでいること。聴こえてくるのは人の言葉じゃなく、風や波の音だけだということ。今まで感じたことのない自然との一体化。サウナから外気浴までのルーティンを経て細胞が目覚めたら、都会が持っていないものがここにはたくさんあることに気づかされるのだ。



目の前の大自然が、「なぜいつも、そんなに急いでいたの?」と、まるで謎かけをするかのように旅人に語りかけてくる。晩成グランドスイート」。ここでのサウナ体験、そして自然体験は、格別だ。贅沢とは何か? その答えを見つけるには、絶好のディスティネーションだと断言できる。

晩成グランドスイート
TEL/0155-67-6257 

住所/北海道広尾郡大樹町晩成2-3 

営業/チェックイン15:00、チェックアウト翌日11:00 無休

HP/moving-inn.com

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