土地の豊かさに触れ、想像以上の感動に出会う「おちあいろう」

土地の豊かさに触れ、想像以上の感動に出会う「おちあいろう」

サウナ旅に惹かれるのは何故だろう。非日常な場所で汗をかけるから? いろんな場所をかい摘めるから? その答えが見つかるかもしれない、悠久の旅に出てみない?

文人墨客が愛した伊豆・修善寺へ

体中で水を味わい、空気を満喫して、土地がもつ豊かさに出会う。サウナ旅は、ととのうことはもちろん、この作業を楽しむことに醍醐味があるのかもしれない。そんな思いを再認識させてくれるディスディネーションを、今回はご紹介しよう。

場所は、伊豆・修善寺の雄大な山々に抱かれ、狩野川と猫越川が合流する畔に佇む「おちあいろう」。明治7年からの歴史を継承し、145年の歴史を紡いだ登録有形文化財の温泉旅館だ。

かつて『落合楼村上』という名で数々の文豪たちに愛されたこの宿は、古き良き時代の面影はそのままに、高い建築技術でデザインを一新し、「おちあいろう」として令和元年にリニューアルオープン。そして近年、趣と情緒のあるしつらえに絶妙に融合した、2つのサウナが登場した。以来、“日本風情を世界に発信するサウナ宿”として注目され続けている。

エンターテインメントの向こう側

サウナは、源泉掛け流しの「月の湯」「天狗の湯」という浴場それぞれに併設している。いや、併設という表現は違うかもしれない。むしろこのサウナを“メイン”に訪れる人も大多数いるのだ。
1つは、茶釜にお湯を注ぐ感覚でロウリュを楽しめる「茶室サウナ」。内風呂から渡り廊下を歩いた先に、茶室さながらの美しい外観が現れる。小さな戸をくぐり、壁一面に敷き詰められたヒノキの芳醇な香りに包み込まれたら、いざ、サ道(茶道)の始まりだ。

ゆっくりとロウリュすれば、ヒノキの香りと熱を帯びた湿気が体全体を覆う。空いていればストーブを囲んで配された広い椅子の上で、横になることだってできる。大きなガラス窓の向こうに見える自然美、足元に見下ろす涼しげな水風呂。視覚的にも飽きさせない造りの中で、終始心地よく良く汗を流せるのが嬉しい。「サウナはガマン」、そんな価値観がしだいに消えていく。

火照った体が向かう先は、足元に見えていた水風呂。天然の川水が足されているだけあって、クールダウンするには十分の冷たさだ。〆は目の前の縁側で、天城の新鮮な空気を吸い込みながらの外気浴。ヒノキの香りをほどよく肌に纏い、この上ない充足感に満たされたらフィニッシュだ。

茶道は人に作法を教えるばかりでなく、宇宙、自然、世界、人間などのすべてを大切にすることも教え込むという。そう聞くと、まさにここでの「サ道」も同じだといえる。自然に感謝し、ここに今自分がいることや日々への感謝にまで気持ちが自然と行き渡ってくるのだ。

ここを監修したのは、 “ととのえ親方”と親しまれるプロサウナーの松尾大氏。これまで経営者から著名人などありとあらゆる1000人以上の人をサウナの虜にしてきた立役者だ。彼は、「エンターテインメントみたいなサウナがあったら楽しいじゃない?」と笑って茶室サウナについて語るが、サウナの本質を知り尽くす彼は、ここで人間らしい価値観が得られることも見据えていたんじゃないだろうか。

「またここに来たい」と願う理由

もう1つのサウナは、露天風呂と洞窟風呂で構成された「天狗の湯」にある、「天狗サウナ」だ。ここの最大の魅力は、サウナに入りながら湯浴みができること。というのは、岩壁から絶えず温泉水が流れ込んでおり、足元へとつたう設計なのだ。これによって室内の保温効果、保湿効果が高まるほか、足湯のようにつま先まで温めることができるというわけ。

温泉水を柄杓(ひしゃく)ですくってセルフロウリュができるので、温泉水と壁面のヒノキの香りが混じり合い、より豊穣な香りに包み込まれていく。「美肌の湯」と名付けられる天城湯ケ島温泉の硫酸塩泉を、サウナで味わえる至高の場所といえよう。

「おちあいろう」では、自分をからっぽにして五感を目覚めさせた後、視界に飛び込むものへの感動レベルは測り知れない。黒柿や紫檀など銘木奇木を用いた建物の造り、山と海の素材を活かして作り上げる料理の旨味、川のせせらぎ、懐かしい土の匂い、新緑、紅葉…。すべては、伊豆の大自然が生む、かけがえのない財産なんだと気付かされる。土地の豊かさに触れ、またここに戻って来たいと願う。そんなシンプルな幸せこそ、サウナトラベラー冥利に尽きるのかもしれない。

この夏、新たな楽しみも

「おちあいろう」の前進は止まらない。この夏は、1日1組限定で川辺でのテントサウナとプライベートBBQを楽しむ期間限定プランも用意されているという。なんと目の前の川に入り天然の水風呂を堪能できるそうだ。セルフロウリュはもちろんヴィヒタやアロマオイル、マッサージストーンなど、「茶室サウナ」や「天狗サウナ」とは一味異なるサウナ浴を体験できる、またとないチャンスだ。

サウナに入り、川に浸かり、爽やかな空気を吸い込みながら外気浴。富士山の溶岩で作られたプレートで、伊豆の美味に舌鼓をうつ。土地の魅力を最大限に味わう、至高の時間。大人の夏休み計画に取り入れてみてはいかがだろう?

おちあいろう

TEL/0558-85-0014
住所/静岡県伊豆市湯ヶ島1887-1
営業/ホテル宿泊者のみ利用可 チェックイン15:00、チェックアウト11:00 無休
料金/(宿泊)2名1泊 6万2000円~
HP/https://www.ochiairo.co.jp

サウナタイプ
茶室サウナ、天狗サウナ
サウナストーブ
メーカー:MISA Electric Sauna Stove
ロウリュ:あり(セルフロウリュ)
水風呂
温度:(夏場)約17° (冬場)約7°
タイプ:上水・川水混合
外気浴
整えチェア:あり
眺望:山と川の目の前

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