ストーブ産業の第一人者であり、サウナストーブ、そしてサウナそのものの開発と拡散に長きに渡って情熱をかけてきた企業「METOS」(メトス)。この代表取締役を務める吉永昌一郎氏へのインタビュー、第2弾。「METOSがメジャーであり続ける理由」を聞いてみたら、こんな「信念と飽くなき野心」を聞くことができた。
吉永昌一郎(よしなが・しょういちろう)
METOS代表取締役社長
『「人」の「心」と「体」をあたためる』を企業ポリシーとして71年の時を歩むMETOS(メトス)を率いる、歴代最年少の経営責任者。前職は自衛官で、そこで培われた使命感や判断力、組織力を現在生かす。創業当時より掲げるグローバルな視野と、本当に価値のあるモノの提供とサービスを受け継ぎながら、日本初のサウナグッズ専門店「Metos Sauna Soppi(メトスサウナソッピ)」をオープンさせるなど、次世代へ向けて新たなステージへのチャレンジを続けている。
サウナ文化、今後のゆくえ
―今後、サウナカルチャーが永続的になるためには、どんなことが必要だと思いますか?
吉永:元々サウナは、リラクゼーションという分野と、ウェルネスという分野、この両方を持っているんですね。でもこれまでの日本の文化はどっちかというと、リラクゼーションのほう、レジャー的な要素に方向性があったんです。だけど、超高齢化社会の日本においてはウェルネス、つまり健康面も謳っていかないと、使いみちは制限されるだろうと。だからこそ、両輪で回していこうという考え方はありますね。

ただ、やっぱり若い世代、そして子どもにも広めていかなきゃいけないと思うんですよ。例えば一般的なサウナ施設には、人数制限だけじゃなく、男性だけとか女性だけとか、子どもは立入禁止とか、いろいろな条件があるじゃないですか。その内容を排除することは僕たちはできないので、逆に言うと、どこでも使えるアイテム、もしくはその制限をなるべく受けないやり方が必要になるんです。それが、アウトドアサウナなんですよね。

METOSがアウトドアで使える『テントサウナ』を取り扱い始めたのは、「どこに持っていってもいいし、制限もない」という意図があったから。外に持っていけば条件は減るし、ロウリュだって思い思いにできる。もっと言えばサウナストーブは、一般的な薪ストーブと同じで、火を眺めて薪の爆ぜる音や蒸気の音、そういう火の癒しを感じながら入るほうがいいと、僕は思うんです。その薪ストーブを取り入れられるのが、テントサウナなのです。
ただテントサウナを販売し始めた頃は、「なかなか火の扱いが難しい」と言われ、最初の5、6年は鳴かず飛ばずでした。全国にテントサウナを持って、あちこちイベントを参加してやりましたけど、みんな反応は「いいよね、面白いよね」って言うだけで、全く買う気がないっていうか(笑)。ぐわっと広まりはじめたのはこの4年ぐらい。キャンプやバーベキューというアウトドアが盛んになってきて、火や薪を使う楽しみを、日本の人たちが理解してきているんだと思います。

アウトドアサウナというログで今広まっていく中で、そのスタイルはバレル型だったり、ログ小屋だったり、トレーラーだったり、いろいろな分野にフィールドを広げていっています。こうしてサウナの入り方が多様化することで、僕たちが望む「子どもでも赤ちゃんでも、家族でも、みんながいくらでも使えるサウナ」ができるんじゃないかなと思っています。

人の心と体を温める
― サウナの多様化が進む中、METOSさんが常に信条としていることはありますか?
吉永:サウナ文化が広まる一方、中には元々の原型、たとえば、煙突がない室内で石を燃やし煙で温めて入る「スモークサウナ」なんかを作りたいと言う人がたまにいるんです。ただね、これは本当に危険。原始人に戻るのか?という話なんです。危ないからこそ、時代の変革と技術の変革とともに改造されてきたわけで。それを全く知恵がない時代まで戻しちゃうのは、あまり良くないというのが本音です。
今の日本の法令では通らないし、事故に繋がるかもしれないし。サウナ文化をちゃんと安全に、安心に広げていくには、今のレギュレーションと、今の日本のルールに準じたサウナで最善を尽くしていくべきだと思います。つまり、人が身体を預ける場所なのだから、そこには絶対に「信頼」があることが前提となるんです。

そういう意味では、僕たちは常に一定の立ち位置でしか走らないと思います。多分ずっと。それが企業のポリシーというか、『人の心と体を温める』というMETOSのコーポレートガバナンスのベースだから。流行り廃りに左右されることなく、この枠の部分で間違いないものをずっと作り続ける、日々改善していく、という信念は持ち続けたいと思っています。
― METOSさんは、いろんな施設や業種にサウナを導入されているからこそ、影響力も大きいですもんね。
吉永:そうですね、うちがあんまり変なものを出すと、不安要素が出ちゃうのは推測できます。新しいデザインや海外の事例など、いろいろな要求がくる時代であるのは事実ですが、できるできない、はハッキリしておきたいなと。それを堅いって言われると、「僕は元々自衛隊なんで」っていつも言いますけど(笑)。

なんせ裸で入るものですし、怪我やら事故やらというのは絶対に避けたい。目新しさや流行りを追求するばかりに、安心安全の部分がおろそかになっていくのが不安なんです。だから逆にきついんですよね。「あそこでこんなのがあった、こんなのが導入されてた」ってなったときに、「METOSにないじゃん」と言われる不安もあって。そこに立ち向かうことも必要ですが、安心安全を技術的に構築するのって、データを取ったり裏付けしたり、本当に時間がかかるものなんです。
信用信頼のその先へ
― お話を伺っていて、さすがサウナ業界の老舗だなと実感します。一方で、社内のサウナ室で社員さんが汗かきながらミーティングされていたりと、すごく自由な社風ですね。
吉永:今はそういう社員が増えてきていますしね。この20平米くらいの大きな会議室は、天井を入れ替えればサウナになるんです。オンラインミーティングもできるよう木枠のモニターまで付いてるんです。昔ね、「私はものづくりのプロですけど、サウナは入りたくないんです」みたいなことを言う社員もいたんですが、「そんなやつがもの売るな」って喝をいれてきました(笑) すべては体験。ものを売る人間は、ものを本心から語れないとだめなんです。


リーディングカンパニーであることの自負。これはひとりひとりに持っていてほしいと思います。もちろん、驕りじゃなくて。「メジャー」の位置付けは、憧れ、信用、信頼、そしてそれらを含めた責任がある。それが守れていないと、どこ向いている会社なの?って思われてしまうんです。いつの時代も、メジャー的な要素はしっかりと肝に銘じておきたいです。


その上で、「マイナー」なところにも目を向けていけたらいいと思いますね。品質を重要視しつつ、スピードも持つ。ここの追求ですね。凝り固まった考え方にならないよう歴史や実績にとらわれず、トレンドを持っている人たちの声に耳を傾け、時に関わり、勉強していく。その先に、僕たちらしい「チャレンジ」があるのだと信じています。